介護に関する仕事は多数あります。直接利用者の介護に携わる介護福祉士などの職種だけではなく、利用者やその家族の相談にのり、不安の軽減ができるよう支援する相談業務も重要です。今回は、相談業務のなかでも、介護相談員の仕事についてご紹介します。
介護相談員は、施設や事業所に在籍するのではなく、行政に所属します。介護サービスを利用する利用者と、介護サービス事業所、行政をつなぐ橋渡し的な役割を持ち、サービスの質の向上や利用者の不安軽減を目的に活動します。
具体的には、2人1組で行動し、1～2週間に1度のペースで利用者と面談します。その際に、改善すべき課題があると、行政に報告し、その結果を利用者にフィードバックします。介護相談員は、あくまで中立的な立場で動き、サービス事業所の評価や利用者への介護は行えません。
介護相談員は、市町村が募集しています。活動にふさわしいと認められた市民が選出され、養成研修を受けると介護相談員になることができます。養成研修は、40時間のカリキュラムで構成され、高齢者の心身の特徴や介護保険制度について学びます。
介護相談員になるための必須資格などはありません。
介護サービスへの不満や意見が反映されるのは、実際に利用者や家族、関係機関などが行政などの苦情受付窓口に相談してからの事後的な措置が一般的です。
しかし、利用者の中には、お世話になっているから、とサービス事業者に対して意見を言わずに我慢しているケースも少なくありません。場合によっては、意見を言わないまま介護サービスの利用を中止してしまう場合もあります。
介護相談員は、第3者的な立場から、意見や不安を口に出せない利用者の意見を引き出し、サービスの改善につなげる役割を担っています。これは、利用者の意見を早期に発見し、早い解決が期待できるだけではなく、事業者側にとっても質の向上につながる貴重な存在です。
介護相談員の活躍によって、利用者が快適にサービスを利用できたり、不安が解消されることで、生活の質の向上にもつながります。また、事業所は、自分たちのケアのありかたを振り返り、改善するチャンスを得ることができます。
介護相談員は、やってはならないことが多く、ルールを遵守しながら活動しなければなりません。例えば、介護事業所の評価や、車いすを押すなどの介助、備品の修理などです。利用者との関係性が密になればなるほど、ちょっとした頼まれごとならやってあげたいと思うかもしれません。しかし、介護相談員の役割を明確にし、利用者と接する必要があります。
また、利用者からの言葉を全て行政に報告するのではなく、客観的な立場で物事を考える必要があります。利用者個人の問題かどうか、改善すべき問題かどうかを、冷静に判断します。そして何よりも、利用者から相談したいと思われるような存在であることが重要です。
介護相談員には、このようなスキルが求められます。決して簡単ではない仕事ですが、サービスの改善によるメリットは多く、利用者の生活を守るための大切な仕事です。自分が関わることで、サービスのあり方が改善されたなどの成果がでると、やりがいを感じることができるのではないでしょうか。
介護相談員が機能している自治体は、残念ながら日本全体の3割程度となっています。積極的に介護相談員が活躍している自治体もありますが、まだ発展途上の自治体もあります。そのため、自分の居住する自治体が介護相談員の募集を行っているかどうかは分かりませんが、気になるかたは問い合わせてみましょう。
介護サービスの多様化に伴い、介護相談員はさらなる活躍が期待されると考えられます。介護の世界をよりよくするために、活動してみませんか？
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