近年、高齢者が利用できる施設の数は種類を増し、それだけ多くの人が介護の世界で働くようになりました。高齢者にとって、食事は毎日の楽しみとなり、美味しく食べられることが元気の証、といわれるほど大切なものです。施設選びのポイントとして、食事のおいしさを重要視されるかたもいるでしょう。施設側も、栄養バランスを保ちながらいかに美味しい食事を作るか、季節の移り変わりを感じられるか、と試行錯誤されているでしょうね。病院と同じように、高齢者施設でも食事は厨房で作られることが一般的でしたが、最近の事情は少し変わってきています。ここでは、高齢者施設の食事にお弁当を取り入れることについて、ご紹介します。
自宅で生活している高齢者の中には、食事作りができない、栄養バランスが偏るなどの理由で、宅配弁当を利用するかたが多いですよね。ごく身近にあるセブンイレブンやコープの宅配弁当などが広く知られていますが、他にもたくさんの会社が宅配弁当を行っています。
宅配弁当は、自宅で生活する個人向けのものだけではなく、介護施設への事業も多くなり、実際に利用している施設もたくさんあります。
一般的に販売されているようなお弁当から、冷凍パックでまとめて届くものまで様々ですが、一番のメリットは人件費や厨房業務の負担が軽減できることです。お弁当で届くと、メニューの考案や買い出し業務を省くことができますし、調理の腕前を問われることがないため、人材の確保に困っている施設にとってはありがたいですよね。
また、調理スペースが小さくてすむことや、水道光熱費の削減も可能です。
お弁当事業を利用すると、中には朝食から夕食まで全てお弁当で提供することも可能です。しかし、毎日お弁当として提供されると、家庭料理の雰囲気から離れることで、利用者にとっては味気ない気分になるかもしれません。
また、働く人のモチベーションにも影響する可能性があります。栄養士として、高齢者の食事をよりよくしたい、と考えている職員さんにとっては、どうでしょうか。お弁当を解凍して提供することがメインになるのは、やりがいが感じにくいですよね。
高齢者施設の利用者には、アレルギーや塩分制限、カロリー制限などが必要なかたも多いです。また、飲み込みが難しいかたは、刻んだり、トロミをかけたり、ミキサーをかけて提供する必要のあるかたもいます。
利用する弁当宅配事業によって、これらの治療食や食形態に対応しているかは違います。より細かい配慮が必要なかたへの食事は、味の調整や食形態の変更を厨房で行う必要もあるでしょう。
厨房で作った食事を提供している施設でも、時にはお弁当を取り入れることで、施設にとっても利用者にとってもメリットとなることがあります。
例えば、行事がある時の特別食です。お花見や敬老会など、特別な日にはお弁当を活用すると非日常が味わえる上に、季節を感じるメニューが提供できますね。また、年末年始やお盆、ゴールデンウィークなど、人材不足となりやすい時期にお弁当を利用すると、職員の確保に奔走することもなくなるでしょう。
高齢者施設に対応する宅配弁当は、基本的には食べやすい形状、柔らかさに注意してありますが、一人ひとり飲み込みの機能は異なります。食事形態を何段階も準備して対応してきた施設では、お弁当でそのまま対応できるケースは少ないため、提供する前に刻んだり、ミキサーにかけるなどの工夫が必要となるでしょう。
また、塩分制限やカロリー制限のあるかたへの提供については、事前にしっかり確認が必要です。お弁当で治療食が提供できるのかどうか、どこまで対応可能なのか、施設側でメニューの一部を変更して提供する必要があるのかを確認しましょう。
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